第1回 【広島県公立高校入試 自己表現】なぜ自己表現を行うのか
中学生のみなさん、こんにちは。
2023年より、広島県の公立高校入試の制度改革がおこなわれます。
なんといっても、新制度の目玉は「自己表現」ですね。
でも、これから受検をひかえたみなさんにとっては、悩みの種ではないでしょうか。
どんな準備をすればいいの?
5分間もしゃべれないよ
このように考えている方は、ぜひこのブログを読んでいってくださいね。
長年公立入試の指導に携わってきた筆者が、あなたの不安を解消します。
はじめに
台本原稿のつくり方をお話しする前に、なぜ「自己表現」が行われることになったのか、行う必要があるのか、今回はその背景と目的をお話しします。
広島県の公立高校入試において、受検者には、従来の学力検査に加えて、「自己表現」を課されることになりました。
これまでに比べて、あなたの負担はより大きくなります。
でも、実際は悪いことばかりではないのです。
むしろ、あなたはラッキーと言ってもよいのです。
それがなぜなのかをこれから解き明かしていきます。
終身雇用制度の崩壊
「VUCA(ブーカ)」という言葉をご存じでしょうか。
「VUCA」とは先行きの見えない不確実な社会状況を表す言葉です。
これからはVUCAの時代に入ると言われています。
これから10年後や20年後には、あなたは社会人として活躍されていることでしょう。
でも、そのころには、現在の制度や価値観が大きく変わっているはずです。
この兆候の一つに、「終身雇用制度の崩壊」があります。
「終身雇用制度」とは、企業が新卒で採用した社員を、定年まで長期雇用し続けるというしくみです。
社員側から見ると、いったん会社に就職すれば、定年までは安定した生活が約束されていたのです。
昭和から平成にかけて日本の企業は終身雇用を続けてきました。
しかし今後この終身雇用制度はなくなっていきそうです。
実際、2019年に、日本のトップ企業であるトヨタ自動車の豊田章男社長は、「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べています。
これからの働き方
終身雇用制度が終わったあとは、どのような働き方になっていくのでしょうか。
2022年に、日立製作所をはじめとするいくつかの大企業が「ジョブ型雇用」を導入するというニュースがありました。
「ジョブ型雇用」とは、企業が、スキル(技能)を持った人材を必要に応じて採用する雇用形態です。
つまり、企業が個人のスキルを買うのです。
プロスポーツ選手の契約のようなものですね。
契約期間が終了すれば、さらによい条件を求めて、移籍することもできます。
あと10年もすれば、ジョブ型雇用が普通になっているかもしれません。
キャリアプランニングの必要性
これからVUCAの時代を迎え、ジョブ型雇用が広まっていきます。
その中で、あなたには社会に出るまでに絶対にしておかなければならないことがあります。
それは「キャリアプランニング」です。
言い換えるならば、「自分の人生設計」です。
これまでの終身雇用制度のもとでは、会社が人生のレールを敷いてくれていました。
でも、これからはすべて自分でやっていかなければなりません。
どんな目標をもち、いつまでにどうやって実現していくかを、すべての人が考えておく必要があります。
そして、仕事を獲得していくためには常に自分を売り込んでいく必要があります。
自分を売り込んでいくために欠かせないもの、それはまさに「自己表現」の力です。
自分はどのような人間か
「自分とは何者か」を即座に説明できる人はあまりいないでしょう。
筆者も旧型の日本人なのでできません。
でも、あなたは、これからの未来を生き抜いていかなければなりません。
そのためには、自分の性格、特技、資格、興味、目標などを、人前で30分でも1時間でも話せなければならないのです。
これからの人生の中で、自分を売り込まなければならない場面に数多く遭遇するはずです。
15歳の段階で、「自己表現」という機会を与えられ、自分について真剣に考える機会を得たことは、あなたにとって、この上なくラッキーなことなのです。
高校入試で「自己表現」を課す都道府県は、現在あまりありません。
あなたと同年齢の大多数の人たちは、高校卒業時や大学卒業時になって、初めて自己について考え始めることでしょう。
15歳の時点でそれを考え始めるあなたは、他の多くの15歳よりはるかに有利な立場にいるのです。
まとめ
今後、わが国では社会制度や価値観が大きく変わっていくだろうと言われています。
不確実で先の見えない世の中をあなたは生き抜いていかなければなりません。
そのために、あなたに必要なものは、「自分の人生設計をしておくこと」と「自分とは何者かを説明できるようにしておくこと」です。
「自己表現」を、今後の人生を考えるきっかけにしてください。
次回は、自己表現の台本原稿づくりに欠かせない「自己分析のしかた」についてお話しします。
そちらもぜひお読みください。